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「事業承継・引継ぎ」 事例紹介

〈事例8〉株式会社一ノ関時計店|親族内承継の事例紹介

後回しにしてきた問題を
関係者全員で考え円滑に事業承継

一ノ関時計店

一ノ関時計店

一代で築き上げた大切な会社。 息子には継いで欲しい。息子も学生時代から継ぐつもりで修行にもいった。想いは同じでも親子だからぶつかり承継が上手くいかないと考えていた。

何もないところから自分の道を切り開いた

50年前の1974年秋田県秋田市手形。当時、周囲には水田しかない場所で、一ノ関時計店は開業した。1から自分の道を切り開くという思いで敢えてこの場所を選んだ。苦労は目に見えていた。人が少ないだけでなく、冬は言わずと知れた豪雪地帯で夏は大雨が降ると道は冠水する。自然との戦いもあった。大学病院ができた事で街並みが一気に様変わりし、時代と街の移り変わりと共に3回も店舗を建て直す事にもなったが、その変化をずっと見守ってきた。「50年続けてこられたのは、修理ができるという事。続けてきた事で身に着けた、誰にも負けない技術力ですね。」と一ノ関勝義さん(現会長)は語る。それを裏付けるようにコロナ禍の中でも一ノ関時計店は売り上げを伸ばした。遠方からも修理依頼が殺到したのだ。昨今はその技術を求めて県内外から依頼が来ている。

先送りにしていた“その時”がきてしまった

一ノ関時計店

一ノ関時計店

“世のため人のため他の人だと出来ない事、人のやりたがらない事も率先して手を挙げて引き受ける”という信条の元、勝義さんは時計店の仕事や商工会議所役員の業務、地域ボランティアと有り余る元気で奔走してきた。その甲斐あって街が大きくなるにつれ、街や人々から信頼されるようになり、時計店も繁盛していった。今では、市内だけでなく大館、由利本荘など、市外からも依頼が来るようになった。しかし、邁進しすぎて承継に関する事は後回しにしており、気づけば80歳手前となっていた。承継に関しては少し前からやっと考え始めた。今は全てがデジタル化されパソコンで全てを行う時代。若い人の力が必要とも感じていた。正明さんに譲ることは間違いないとも思ってはいた。しかし、やはり親子であるがゆえにかみ合わない事も感じており、第三者の専門のスタッフを入れて話す必要を感じていた。商工会議所の関係で秋田県事業承継・引継ぎ支援センター(以下センター)の事を知っていたので、連絡をしようかと考えていた。

思いのほか承継作業は進まず・・・

息子の一ノ関正明さん(現社長)はいつでも承継するつもりでいた。学生時代から雑誌や専門書を読み漁り、大学卒業後にメガネの専門学校に通い、その後、東京の百貨店等で働き、メガネ販売の経験を重ねた。もはや時計店に関わる事は生活の一部だった。正直、「早く承継してほしい」とも思っていた。ある時、先代の奥様が体調を崩し、「二人とも倒れてからの承継は本当に大変だから社長交代して欲しい」と伝えた。

流石にこの時ばかりは勝義さんも賛同した。

しかし、いざ進めようとしてもなかなかうまく行かない。一番大変だったのは事あるごとにぶつかってしまう事。話し合いにならず喧嘩になってしまい遅々として進まない事だった。

勝義さんも現役で、経営方針でも意見がぶつかることが多く、やはり第三者を交えながら進めていく必要性を感じていた。

勝義さん

勝義さん

正明さん

正明さん

当事者間で気づかない問題も支援

一ノ関時計店さんとセンタースタッフ

一ノ関時計店さんとセンタースタッフ

秋田商工会議所より連絡を受けたセンターの小笠原さんは、まず当事者たちが問題と捉えている事だけでなく、当事者も気づかない承継の妨げとなるであろう事項もまとめた。事業承継計画の策定においては、当事者全員が問題に向き合い、納得のいく形で真剣に事業の未来を決めていけるようにした。通常は前社長と新社長の2名で話し合いを行うが、今回は夫人も交えそれぞれの本心を伝える事で、それぞれが歩み寄るプロセスを組んだ。これが事業承継で一番重要だった。散漫する問題を少しずつ解決していき、一ノ関時計店は未来への時を刻み始めた。

事業承継を終えた正明さんは「承継するための準備ができていると思っていたが、できてなかった。相続とか住宅のことも関与してきて、簡単にいかなかったりした。家族でやっているお店というのは家族での話はあるんだけど、まとまらない。第三者に入っていただいて問題を解決するのはすごく近道だと思うし 見えない部分が見えてくる」と振り返った。地域や法律、税金など様々な事が関与してくるのが事業承継。センターは当事者では気づかない事も、まとまらない事も手助けしてくれる。

もっと早く相談すればよかった

「心配事を話せる、専門家のアドバイスもいただける、そして安心する事ができて助かりました。なかなか踏ん切りが付かないと思いますが、相談は無料で親切に自分ごとのように聞いてくれます。事業承継は何をおいても早く動いた方が良いと思いました。私の場合は遅すぎました(笑)(一ノ関勝義さん)

秋田県事業承継・引継ぎ支援センターによる事業承継事例

滋賀県事業承継・引継ぎ支援センターによる事業承継例

一ノ関時計店

株式会社 一ノ関時計店

  • 秋田市広面字昼寝
  • 創業:1974(昭和49)年
  • 事業内容:時計・メガネ・補聴器の販売 修理

事業承継フロー

    • 1
    • 先代夫人の体調不良を期に後継者自ら
      事業承継に動き出す
    • 2
    • 親子であるが故に意見がぶつかる
      事も多く、遅々として進まなかった
    • 3
    • 秋田商工会議所の紹介でセンターに相談
    • 4
    • 関係者全員で意見交換の場を設け
      納得行くまでサポートを行う
    • 5
    • 専門家も交えて事業承継計画を策定
    • 6
    • 承継後にスムーズな経営ができる
      状態となり承継を完了

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事業承継・再生支援部

TEL. 03-5470-1595

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