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「事業承継・引継ぎ」 事例紹介

〈事例10〉油圧技研株式会社|親族内承継の事例紹介

後継者の熱き想いを受けて
センターと商工会が伴走支援

父の後を継ぐだろうと思っていた長男が離脱。
次男が後継者の意思を固めるも先代とは考え方でぶつかることも。 それを見返すために猛勉強し、支援者の力も積極的に活用した。

独立・創業から仕事一筋で

前経営者 中西 德雄 さん

前経営者 中西 德雄 さん

油圧プレス機や研磨機、ジャッキ、リフターなど、 ものづくりの現場で活躍する工作機械の多くに組み込まれ、 モノを動かしたり力を伝達したりする機能を担っている油圧装置。 岡山県浅口市に本社を置く油圧技研は、そうした油圧装置の修理やメンテナンス、 さらにはオーダーメイドによる油圧ユニットの設計・製作まで手掛ける。

同社の創業は1979(昭和54)年。現会長の德雄さんが、 それまで勤めていたプレスメーカーから独立する形でスタートした。 以来45 年、油圧装置を専門に取り扱う会社として顧客の厚い信頼を得てきた。 「ゼロからのスタートでしたし修理やメンテナンスが主ですから、 いつ声がかかるか分からない。 とにかく仕事があれば休みなしで対応していました」という德雄さん。 後継ぎのことなどを考えている余裕もなかったそうだ。

工場の様子

作業の様子

兄弟で入社するも兄が離脱

後継者 中西 祐二 さん

後継者 中西 祐二 さん

そんな中、德雄さんの長男と次男が相次いで同社に入社。 「この時点では後継ぎとかは特に考えていませんでした。 一緒にやれたらいいなという程度でしたね」(德雄さん)。 しかし長男は德雄さんと考え方が合わずに退社してしまう。 「一緒に働いていたころは、兄が後を継いで自分はサポート役として…」 と考えていた次男の祐二さんは、 兄の退職で事業承継を意識するようになったという。

「会社には45 年間に培った技術やノウハウがあります。 しかし自分には経営の知識も知恵もなかったので、 本やセミナーなどで猛勉強しました」(祐二さん)。 しかしこのころの会社の経営状況はかなり厳しく、 このままではダメになると感じた祐二さんは、 飛び込み営業やホームページの作成など、 自分ができることから動き始めた。

【転機】後継者育成塾で学ぶ

積極的に学ぶ祐二さん

積極的に学ぶ祐二さん

経営を学ぶため無料のセミナーや講習会などにも積極的に参加していた祐二さんは、 岡山県産業振興財団が後継者育成塾を開催していることを知り、早速受講。 「カリキュラムはもちろん、 ここで他社の後継者の方々と出会えて話が聞けたことも勉強になりました」 (祐二さん)。

1人でやれることには限界がある
だからこそ外部の力を積極活用

育成塾では、他の受講生から「商工会なら」という話を時折耳にしたという祐二さん。 それまで経営に関して相談する先が分からず悩んでいたこともあり、早速商工会に出向いた。 「本で勉強したりセミナーを受講したりしても、一人でできることには限界を感じていたんです。 そこで商工会に相談したところ力を貸してもらえることになりました」。 これをきっかけに、経営の相談だけでなく持続化補助金の申請支援など、 商工会から様々なサポートを受けることができるようになった。

【支援】誰よりも会社を想う

岡山県商工会連合会の山岡 稔さん

岡山県商工会連合会 山岡 稔さん

 「祐二さんはとにかく一生懸命この会社の将来について考えていましたね。 会社が抱える課題を何とかしたいという後継者としての熱い想いが伝わってきました」 と語るのは、当時浅口商工会で経営指導員だった岡山県商工会連合会の山岡稔さん。

そこから継続的に支援することになった山岡さんは、 油圧技研のこれからについて先代からもじっくり話を聞いた上で、 同社の事業承継をサポートしていった。

考え方は違っても目指す先は同じ

事業承継で障害になりがちなのが、先代と後継者の会社の将来に関する考え方の違いだ。 山岡さんは祐二さんに事業承継計画の策定を勧める。 今どんな課題があり今後どう解決していくべきか、 先代と後継者のそれぞれの考え方を明らかにすることが狙いだった。 そこからは岡山県事業承継・引継ぎ支援センター (以下センター)の金原光広さんがコーディネーターとして参加した。 「計画書と言われてもどうすればいいのか全く分からなかったのですが、 山岡さんや金原さんにアドバイスをいただき自分の考えを落とし込んでいきました」と祐二さんは振り返る。

まだ親子間で意見がぶつかることもあるというが、 「考え方が違っても目指すところは同じ。 ただ、あまり無理せずに地に足のついた経営をやってほしいと思っています」 と德雄さん。 「自分は経営者としても技術者としてもまだまだです。 会長にはもうしばらくお目付け役を担ってもらいたいですね」(祐二さん)。


山岡さんに相談する、德雄さん、祐二さん

山岡さんに相談をする德雄さんと祐二さん

金原さんから助言をうける祐二さん

金原さんから助言をうける祐二さん

成功のポイント

岡山県事業承継・引継ぎ支援センターの金原 光広 さん

岡山県事業承継・引継ぎ支援センター 金原 光広 さん

油圧技研の経営を支えてきたのは現会長の豊富な経験と技術力です。 会長から見ると祐二さんは頼りなく見えるかもしれませんが、 彼は誰よりも会社の未来のことを考えていますし、 外部の支援を積極的に活用しています。 そんな後継者としての想いや前向きな取り組みが成功のポイントと言えるでしょう(金原さん)。

岡山県事業承継・引継ぎ支援センターによる事業承継事例

岡山県事業承継・引継ぎ支援センターによる事業承継例

油圧技研株式会社

油圧技研株式会社

  • 岡山県浅口市鴨方町小坂東2614-1
  • 設立:1979(昭和54)年
  • 事業内容:油圧装置メンテナンス事業

事業承継フロー

    • 1
    • 後継者が岡山県産業振興財団の
      後継者育成塾を受講
    • 2
    • 後継者が商工会に
      経営相談
    • 3
    • 商工会が持続化補助金の申請や
      経営革新計画の策定・認定をサポート
    • 4
    • 商工会がセンターに
      事業承継の支援を要請
    • 5
    • 専門家も交えて
      事業承継計画を策定
    • 6
    • 株式譲渡による
      事業承継が完了

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