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「事業承継・引継ぎ」 事例紹介

〈事例21〉和洋菓子工房 泉屋|第三者承継の事例紹介

素材そのものの味にこだわり続け
残したかった
“店”と“味”と“想い”

50歳頃に、後継者のことを考え始めた。地域に愛されるお店と味、想いを引き継ぎ、100年続く和菓子屋を目指したい。

素材本来の味にこだわり64年

広島県のほぼ中央部に位置し、自然に恵まれた時間がゆっくりと流れる街、三良坂町に1959年(昭和34年)和菓子の製造販売として泉屋は創業した。創業当時は店主夫人の洋裁業と併用してなんとか軌道に乗せた。時が経ち、二代目の古野純浩さんが修行のため18歳で出て30歳の時に帰ってきた。以来、初代からの技術を受け継ぎつつこだわりを追及してきた。
“素材にこだわり、素材本来の味を引き出す”を心情にしても古野さんほど体現している人は珍しいだろう。古野さんは1年かけてもち米を自身で精米、製粉し小豆も北海道産のみを使用している。そうして完成された1番人気のかしわ餅は、1日で2000個を売り上げるほど地元に根強いファンを持つ。一心不乱に和洋菓子に向き合い続け、気が付けば“次”を考えるような時期になっていた。

考え始めた100年に向かう為の“次”

名物 かしわ餅

名物 かしわ餅

古野さんも50歳になり、毎日忙しくも商品に向き合い二代目として地元から愛されるお店作りをしていた。そんな古野さんが考えていたのは100年企業としての泉屋だった。古野さんには“お菓子そのものの素材を活かして、力を引き出してやる。だからあまり変なモノを付け足さない。それが泉屋の仕事”という強い想いがあった。それを具現化した柏餅をそのまま生きた商品として100年目に繋ぐにはどうしたらよいか?それを考えた時にまだ働き盛りではあるが、自身で動き出すことにした。
承継先を探すに当たって最も重要視したのは“人”だった。人が合わないと想いが合わない。想いが合わないと上手くいかない。その想いを共有できる人を探し始めた。相手がどういう想いがあるのか?自身の想いとすり合わせないといけない。
看板と味はもちろん守りたいが、最も重要なのは伝統や“想いを受け継げる人”を探す事。そんな中、三次広域商工会の紹介で広島県事業承継・引継ぎ支援センター(以下センター)に相談し、林さんが対応する事となった。

企画販売経験はあるが製造経験は無かった

立花さんは、大手企業においてマーケティングの経験があり、営業や商品開発に携わっていた。お菓子の製造経験はないが、広島県内での和菓子製造に関心があり、泉屋を紹介された。古野さんとの初めての会話では、「フィーリングが合うな」という印象。そして、柏餅を食べた時に「あぁ、これは(引き継いで)残して行きたいな」と強く感じ、その時から「古野さんさえよければ引き継ぎたい」と考えていた。

とはいえ、職人の世界は完全未経験でやっていけるほど甘くはない。焦点になったのはやはり実務経験だった。一人前に作れるのか?継続していけるのか?古野さんと立花さんの会話の中でも、やはりそこが引っかかった。立花さんは、古野さんへ実際に1か月間一時見習いとして職人が出向き、お菓子作りの経験、力量を古野さんに確認してもらうことを提案。結果は古野さんの太鼓判。不安要素が無くなり一気に話が進むこととなる。古野さん自身は、執行役員として残り、ともに歩むこととなった。

古野さん

古野さん

立花さん

立花さん

偶然と幸運を引き寄せた情報網

古野さん、立花さん、林さん、柴さん

古野さん、立花さん、林さん、柴さん

センターが最初に相談を受けたのは2017年の事だった。相談を受けた林さんは、「これは非常に難しい案件だと思いました。」と、当時を振り返る。三良坂という土地柄、山間部で対象となるべき若手が極端に少ない。他の地域からという事になるが、経験豊富で職人気質の技術職となると、更に対象が狭くなる。実際、2年の間に他業種からの希望は数件あったが、やはり経験が関門となり叶わなかった。マッチングができたのは突然で偶然だった。広島安佐商工会の経営指導員から「こちらの区域で、県内で和菓子の譲渡の案件があれば是非紹介してほしい、という方がいます。」という情報が舞い込んできた。センターの持つ広い情報網が活きた出来事だった。

そして2人の相性が良かった事も幸運だった。マッチング後は、専門家も紹介しながら話を進めていき、最終契約締結に至った。事業承継後、立花さんは泉屋の味を守りつつ、アイデアやネットワークを生かして積極的に事業展開し、販路を拡大している。

安心して任せる事ができた

私の想いを全部受け止めていただけたので、安心して任せる事ができました。事業承継を考えている方は、早めに動くことをお勧めします。体が駄目になったら事業も駄目になります。事業が駄目になったら、絶対に次に引き継ぐ人は出てきません。体がしっかりしているうちに、引き継ぎを考えていった方がいいと思います。(古野さん)

広島県事業承継・引継ぎ支援センターによる事業承継事例

広島県事業承継・引継ぎ支援センターによる事業承継事例

和洋菓子工房 泉屋

和洋菓子工房 泉屋

  • 所在地:広島県三次市三良坂町三良坂
  • 創業:1959(昭和34)年
  • 事業内容:和洋菓子の製造販売業

事業承継フロー

    • 1
    • 後継者不在で悩んでいたところ、
      センターへ相談
    • 2
    • センター内で後継者候補を探すも、難航
    • 3
    • 商工会の経営指導員が候補者の情報を共有
    • 4
    • 課題であった菓子の製造経験がある
      候補者が見つかる
    • 5
    • 事業引き継ぎの交渉を経て事業譲渡

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事業承継・再生支援部

TEL. 03-5470-1595

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