〈事例20〉有限会社谷井田自動車|第三者承継の事例紹介
地元のお客様に支えられ50年
社長と夫人の二人三脚
後継者候補であった萱橋様のご子息は、同業ではあるが当社を継ぐのではなく、カスタム車両の分野をやりたいと独立希望であり、後継者不在となっていた。
激動の時代、クルマのお医者さんを50年
1973年(昭和48年)関東大震災からちょうど50年のこの年、有限会社谷井田自動車が開業した。当時、自動車は今よりも小まめなメンテナンスが必要なうえ、茨城県つくばみらい市(旧筑波郡伊奈町谷井田)は、今も昔も自動車が生活を支える土地柄である為、購入から車検、保険の手続きまでをサポートする“クルマのお医者さん”である同社は町に必要な存在であった。車に向き合うのは代表取締役(当時)の萱橋正さん、お客様と向き合うのはふみ子夫人の二人三脚で50年。大事なお車をお返しする時の丁寧な洗車はもちろん、交換した部品を保管しお客様に確認してもらえるようにするなど、きめ細やかな対応が評判で地元で愛されてきた会社だ。
後継者不足問題が襲う
しかし、世間で騒がれている後継者不足の問題は谷井田自動車も襲っていた。ご子息はいるが既にご自身の力で独立しており、事実上後継者不在であった。今までずっと頼りにしてくれて支えてくれているお客様のことを思うと、廃業は考えられなかった。「なんとかならないか?本当に大切に引き継いでくれる人はいないか?」と悩む日々が続く時、茨城県事業承継・引継ぎ支援センター(以下センター)の広告に目が止まった。不安がなかったわけではない。国の機関なのか民間なのかもわからない。しかし、電話をして不安をぶつけてみる事にした。
対応したセンター統括責任者補佐の佐藤孝幸さんは「国の機関なので安心してご相談ください。状況に応じて支援します。」と抱える不安を払拭し、その後、センターは事業承継に向けて譲受企業の選定を開始。以前から譲受の相談があった有限会社清原代表取締役の清原信義さんを紹介した。
事業拡大と地域に対する想い
有限会社清原は1993年(平成5年)に中古車販売店として開始。1997年(平成9年)に法人を設立し、以来乗用車からトラックまで中古車販売業を行っていたが、手薄となっていた車検業務を強化し、事業拡大や新規顧客獲得を模索していた。清原代表取締役は最初「基準の厳しい車検の指定工場の認証を受けているという事で、どんな方かはわからないが、とりあえず話をしてみようと思った。」と語る。
地元で事業を開始して30年。
地元のお客様に育てていただいた想いもあり、自動車関連での新しい事業があれば、地域貢献につなげ、感謝の気持ちを伝えていきたい、という特別な想いも持っていた。実際に話を聞き、「車検業務を主軸に行う事業は人から頼られるクルマのお医者さん。人から頼られるこの事業を引き継ぎたい、という気持ちで申し出た。」と当時を振り返る。奇しくも単に事業拡大というだけでなく、内に抱える想いとも相まって契約へと話が進んでいった。
譲渡後についてもセンターがアドバイス
始まりは「後継者がいない」という1本の電話だった。不安を抱えた萱橋夫人からの電話を受け、佐藤さんは事務所に向かった。車検を主に扱う指定工場の日常は非常に忙しい。持ち込み車両が非常に多く、萱橋前社長は常に工場にて社員とともに動き、来店客や事務処理は奥様であるふみ子さんが手際よくさばいていた。担当の佐藤さんは、何度も足を運び不安をひとつひとつ丁寧に解消し、お互いが気持ちよく承継を行えるよう尽力した。譲渡に関わる事、従業員の事、譲渡後に関する事、大きな課題は3つあった。
譲渡に関しては当該事業に関係のない所有不動産、節税も含めて、顧問税理士を交え知恵を絞った。従業員には清原社長の人間性や考え方を知ってもらう為に一人ずつ面接する場を設けて理解してもらえるように奔走した。そして萱橋夫妻には譲渡後に自動車関連事業から不動産賃貸業への業種転換のアドバイスを行った。 最終的には社名も残り、ふみ子夫人も変わらず事務業務として残ることとなり、今までのお客様や従業員の不安も全て解消し、ご意向に沿った良い形で契約を迎えることができた。
安心して引き継ぐことができた
会社は譲渡したが、社名と従業員は残りました。わかりにくい場面でもわかりやすく丁寧に説明いただきました。いつも来ていただいて相談にのっていただけたのが何よりでした。(ふみ子夫人) 一番気がかりであった従業員の雇用が維持されてほっとしています。安心感を持って引き継ぐことができました。(萱橋前社長)
茨城県事業承継・引継ぎ支援センターによる事業承継例
有限会社谷井田自動車
- 所在地:茨城県つくばみらい市
- 創業:1973(昭和48)年
- 事業内容:自動車関連事業
事業承継フロー
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- 1
- 後継者不在で悩んでいたところ、
センターの広告を見て相談
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- 2
- センター内マッチング支援を開始、
センターが株式譲渡先を選定
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- 3
- 両者の要望のヒアリングや双方の
顧問税理士と協議しながら調整
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- 4
- 契約書締結前に、全従業員と
清原社長との面談
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- 5
- 自動車関連事業から不動産賃貸業
への業態転換の提案
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- 6
- 事業引継ぎの交渉を経て
株式を譲渡