〈事例28〉青森つばめプロパン販売株式会社|第三者承継の事例紹介
伝統の味は消さない!
異業種承継が灯す味と想いと、未来のカタチ
青森つばめプロパン販売株式会社は、八戸地域のプロパンガス販売を主体とし、昨今は燃料油、酒店、飲料水の宅配など多角的に展開している。今回、合名会社髙村醬油本店の事業を譲受し、120年の伝統を持つ同社の「コーザンしょうゆ」、「タカラウメ」の販売も手掛けることとなった。
転機 お客さんがいるから続けたい
譲受者 黒澤 周成さん
「コーザンしょうゆ」と「タカラウメ」。八戸市で120年もの間、親しまれている醤油である。家族経営で行っていたが東日本大震災で被災し工場が損壊。しかし、髙村さん(当時店主)は「味を待っているお客さんがいる」ただそれだけで事業を続けていた。青森県事業承継・引継ぎ支援センター(以下センター)の吉田さんが訪問したのはそんな時だった。
支援 一縷の望みを賭けた登録
元々家族経営で続けてきた儲けの少ない商売であったが、吉田さんが訪問した当初、髙村さんは近隣や近しい方々には相談済みで、引き取り先が見つからず「買う人がいないんだから、吉田さんの気持ちはわかるけれども無理だよ、廃業するしかないんだ」という心持ちであった。 吉田さんは「この醤油を使いたい人達がいる。何とかそこをつなげたい。」と感じ、半年ほど通い詰めてセンターの全国版マッチングサイトにネームを伏せて登録する承諾を得た。1年ほど経過したある日、八戸の金融機関から、「自社の配達業務を活用できる事業を探している企業さんがいる」との情報が入り、それが青森つばめプロパン販売株式会社との出会いだった。
“台所”でつながる事業承継へ
青森つばめプロパン販売株式会社は、八戸地域のプロパンガス販売を主体とし昨今は燃料油、酒店、飲料水の宅配など多角的に手掛けている。M&Aは初めてではなかったので、抵抗感はなかった。醤油は初めてであったが、ガスも醤油も台所でつながっており、相乗効果も後々期待できるという目算はあった。
前店主への想いと社内活性化
想いや人の歴史を受け継ぐ以上、利益は二の次だと青森つばめプロパン販売の黒澤さんは思っていた。まずは前店主の意思ややり方をしっかりと引き継ぎ、自分たちのやり方を表すのは数年先で良いと考えていた。ある程度の引継ぎが終わり、前代表がホッとしているらしいと聞いた時は、自分の親に感じるような安心感を感じていた。
社内的にも大きな変化が起こった。販路拡大というだけでなく全く未知の事業に取り組むと、社員たちはわからないので相談をはじめ「話し合う文化」が生まれたのだ。その効果は凄まじく、商品構成から箱のデザイン、パンフレット、ギフトボックスの文字デザインやシールに至るまでを社内企画で完成させた。事業承継は譲受側にも思わぬ恩恵があったようだ。
成功のポイント
青森県事業承継・引継ぎ支援センターエリアコーディネーター
吉田 直志さん
地域の顧客と取引が多い地域金融機関とのつながりが、今回の成約につながりました。
同業種にこだわらず、地域のハブとなる企業や業容拡大に取り組んでいる企業に声をかけてみたことが、地域で愛される味を守る結果につながりました。譲受側がM&A経験があったこともスムーズに進んだポイントです。
青森県事業承継・引継ぎ支援センターの事業承継事例

青森つばめプロパン販売株式会社
- 所在地:青森県八戸市大字十日市字上樋田26番地11
- 創 業:1959(昭和34年)年
- 事業内容:プロパンガス販売等