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「事業承継・引継ぎ」 事例紹介

〈事例27〉株式会社さらい|第三者承継の事例紹介

2つの事業承継・引継ぎ支援センターが連携してマッチング

これまで手掛けてきたものを責任持って引き継げる後継者を――
顧客サービスと従業員の雇用を守りたい。 経営者の想いを2つのセンターが連携して支援。

知人から美容室を引き継ぐ

譲渡者 村田 正一郎 さん

譲渡者 村田 正一郎 さん

JRの6路線のほか千葉都市モノレールが乗り入れ、京成線との乗換駅でもある千葉駅。 数年前に駅ビルが建て替えられて商業施設なども充実、鉄道利用者だけでなく多くの買い物客でにぎわっている。 そんな千葉駅の目と鼻の先に店を構えるCut Roze(カットロゼ)は、 カットとカラーだけに限定した低価格型の美容室で、40~60代の女性を中心に固定客も多い。

運営する株式会社さらい前社長の村田正一郎さんは、飲食店やパソコン教室など多くの事業の経営を手掛けてきた。 Cut Roze は2011年に知人の経営者から運営を引き継いだ。 村田さん自身、それまで美容室を経営したことはなかったが、 人の配置や営業時間を見直したり店内の什器などを手作りで整えたりすることで、引き継いだ当時厳しかった経営状況も改善していったという。

そろそろ自分の時間を持ちたくて

Cut Rozeの店内

Cut Rozeの店内

そんな村田さんが事業承継を意識し始めたのは60歳を過ぎたころから。 「60歳といえば、サラリーマンなら定年というタイミングですよね。 私もそろそろ自分の時間を好きなことに使いたいと思い始めました」 という村田さんは、飲食店を親族に引き継ぐなどしながら事業承継を進めていった。

そんな中で最後まで残ったのが美容室だった。 「親族や従業員への承継は難しかったので、早くから第三者への引き継ぎを考えていました。 しかし経営者仲間も同年代ということもあり、引き受け手がなかなか見つかりませんでしたね」(村田さん)。

【転機】顧客と雇用を守りたい

千葉県事業承継・引継ぎ支援センター

千葉県事業承継・引継ぎ支援センター

後継者が見つからないとなれば廃業も選択肢のひとつとなる。 しかし「美容室を利用してくれる顧客へのサービスや従業員の雇用を守りたかった」という村田さんは、 ダイレクトメールで目にしていた千葉県事業承継・引継ぎ支援センター(以下千葉センター)に相談、 千葉センターを介して具体的な後継者探しが動き出した。

そこでまず従業員に声をかけ、後継者としての適任者を探したが、 経営に前向きではない従業員もおり、事業を引き継ぐには難しい状況だった。

【支援】エリアを跨いで後継者探し

譲受者 佐藤 文彦 さん

譲受者 佐藤 文彦 さん

千葉センターには該当しそうな会社が何社かあったものの、いずれも承継には消極的だった。 そこで東京と埼玉あたりまでエリアを広げて探すことになった。 すると、東京都事業承継・引継ぎ支援センター(以下東京センター)の担当者から1人の人物を紹介された。 それが、かつて大手美容室チェーンの経営者だった佐藤文彦さんだ。

佐藤さんはかつて携帯電話販売会社で、アルバイトから社員を経て役員を務めていた。 後にその会社が美容室事業を買収、佐藤さんがその経営を担うことになった。 2017 年に代表を退いた佐藤さんは、その後大学で勉強するなどの充電期間を経た後、 再び経営に携わることを希望し東京センターに譲受希望の登録を行っていたのである。

エリアを越えた出会い

その情報を得て興味を持った村田さんはすぐに面談を希望。 東京センターから佐藤さんの情報を提供されていた千葉センター統括責任者補佐の横尾さんが、早速面談を設定した。 「最初の面談で佐藤さんは“1度お客として店に行ってきたんです” と話されて、これは本気なんだなと思いましたね」(横尾さん)。

面談のイメージ

面談のイメージ

千葉県事業承継・引継ぎ支援センター 横尾 敏之 さん

千葉県事業承継・引継ぎ支援センター 横尾 敏之 さん

前社長の想いを引き継ぐ

佐藤さんの第一印象は「若いなあ」だったという村田さん。 「しかもこの業界に精通しているしこの人なら大丈夫、そう感じました」(村田さん)。 一方の佐藤さんは「村田さんが、これまで手掛けてきたものを責任持ってちゃんと引き継ぐ相手を探してたと言われたのが印象的で、 私もそこに共感しました」と振り返る。その後は事業譲渡に向けてスムーズに進み、最初の面談から5カ月ほどで株式譲渡契約書の締結が完了した。

引継ぎ後、佐藤さんが取り組んだのはスタッフとの信頼関係の構築だったという。 「美容室は従業員がお店そのもの。だからこそコミュニケーションを取ることを何より優先しました」(佐藤さん)。 従業員を守りたいという村田さんの想いは、しっかり引き継がれているようだ。

主体的に仕事を行う従業員が多い

メニューと価格

成功のポイント

今回は譲渡者と譲受者の2 人とも引き継ぎに対して前向きだったことですね。 早くから村田さんはサービスと雇用の維持を条件として明確にし、佐藤さんもそれに納得されました。 M&A が非常にスムーズに進んだポイントはそこだと思います。(横尾さん)。

千葉県事業承継・引継ぎ支援センターの事業承継事例

千葉県事業承継・引継ぎ支援センターによる事業承継事例

株式会社さらい

株式会社さらい(Cut Roze)

  • 所在地:千葉県千葉市中央区弁天1-1-1
  • 創 業:2011(平成23)年
  • 事業内容:理容・美容業

事業承継フロー

    • 1
    • 前社長が引退を前提に
      後継者を探す
    • 2
    • 千葉センターに相談の上、
      後継者探しを依頼
    • 3
    • 大手美容室チェーンの元経営者が
      東京センターに譲受者として登録
    • 4
    • 東京センターが千葉センターに
      後継者候補を紹介
    • 5
    • 千葉センターの仲介で両者が出会う
    • 6
    • 株式譲渡による事業の
      引き継ぎが完了

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事業承継・再生支援部

TEL. 03-5470-1595

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