〈事例30〉有限会社花ぐすく香華堂|第三者承継の事例紹介
守る味、 広がる道
伝統の味 × サプライチェーン × 地域未来
沖縄の行事には欠かせない重箱料理などの伝統料理を販売。後継者不在で廃業を考えていた。運送業や食品加工などを手掛ける「沖縄SEIWAサービス」と経営方針等が合致し承継となった。
転機 経営陣の高齢化、 後継者問題
譲受者 比嘉 康祐さん
2世代にわたり沖縄の食卓や行事を支えてきた老舗惣菜店「花ぐすく香華堂」。食文化や生活様式と深く結びついている行事料理や、味にこだわった弁当・惣菜などを製造、販売してきた。 地元デパートなどにもテナントを構え、長年地元から愛されてきたが、近年は経営陣の高齢化と後継者不在に悩んでいた。
支援 柔軟なマッチングと支援力
親族にも後継者がおらず、花城さん(前代表)は「自分の代で終わりかな」と半ば諦めていた。そんななか、沖縄振興開発金融公庫の担当者と雑談するなかで事業承継の話になり、沖縄県事業承継・引継ぎ支援センター(以下センター)を紹介してもらった。連絡を受けたセンターの玉城さんはすぐに買い手の候補を探し始めた。1年ほど経て沖縄SEIWAサービスの比嘉さん(現代表)から「興味があります」と連絡があり、花城さんは直接会って「この人だ」と心を決めた。
沖縄SEIWAサービスは比嘉社長が展開する食品事業の運送部門として起業した。元々惣菜事業や行事の多い沖縄、重箱事業への関心はあったが0からは敷居が高く、既存事業を引き継ぎたいと考えていた。子供の頃から親しんだ「花ぐすく」という言葉を聞いたときに「株式を分割取得にしてでも買いたい!」と思った。経営権は二の次だった。
実際に花城さんに会って話をしてみると、お酒も飲まず旅行もせず、何十年もの間ひたすら会社に尽くしてきた事を知った。そんな人から出た要望が「味と雇用を守り続けて欲しい」。頭が下がる想いだった。“会社を守る、伝統を守る、味を守るとはこういうことなんだ”と心に刻んだ。
大きかったセンターの存在。未来へ
「センターがいなかったら実現しなかった。」比嘉社長は断言する。センターの玉城さんは、株式譲渡の資金調達でも沖縄振興開発金融公庫からの融資にあたって橋渡し役を担ったし、複雑な提出書類の作成では親身になって相談にのり、常に寄り添って支援した。
「前社長は今も工場長として働いています。一生懸命なその姿を見ていると、私もこの仕事を頑張ろう!と本当に思います」と、従業員も花城さんも新しい環境を前向きに捉えている。
「今後は全国へも広げていきたい。最近は地元でも沖縄料理を意識する機会が減っていると感じている。老若男女問わず親しんでもらえるメニュー開発をしたいと想っています。」と比嘉さんは密かな夢を語る。伝統料理は味へのこだわりを大事にしながら新たな夢を乗せ、未来へと受け継がれた。
成功のポイント
沖縄県事業承継・引継ぎ支援センター サブマネージャー
玉城 誠司さん
双方の価値観の一致や将来への展望、そしてその熱意が伝わった事がポイントでした。
譲受側の「歴史ある伝統料理を守りたい」という熱意や、将来への展望が譲渡側に響き、「この人に任せて大丈夫」という安心感につながったと思います。
沖縄県事業承継・引継ぎ支援センターの事業承継事例

有限会社花ぐすく香華堂
- 所在地:沖縄県那覇市田原2丁目2-3
- 創業:1971年創業
- 事業内容:仕出し・惣菜製造業