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「事業承継・引継ぎ」 事例紹介

〈事例5〉飯山ブロック株式会社|親族内承継の事例紹介

センターの支援で未来が見えた
遅れていた事業承継が早期実現

息子を後継者にさせたいが、負債を少しでも減らした状態で引き継がせたい。負債を抱えていた前経営者が、事業承継をスムーズに実現できたのはなぜか。

事業承継が難しかった理由
負債を抱えた経営者でも事業承継を進めるべきか?

長野県事業承継・引継ぎ支援センターの様子

長野県事業承継・引継ぎ支援センターの様子

負債のある企業が何の準備もせずに事業承継すると、その返済は後継者に引き継がれる。 もし、事業承継後に返済が困難になったら、後継者は個人の資産で弁済しなければならない。 そういった悩みから、事業承継に踏み切れないという経営者は多い。 そこで、全国の事業承継・引継ぎ支援センターでは、事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策を行っている。 負債のある経営者でも諦めずに、まずはセンターに相談してみたい。

マイナスからの出発

飯山ブロック株式会社 会長 仲條楯一さん

飯山ブロック株式会社 会長 仲條楯一さん

2015年北陸新幹線 飯山駅が開業し、東京駅から約1時間40分、長野駅から約11分という利便性の向上により、近年多くの観光客が訪れるようになった長野県飯山市。 同市は県の特別豪雪地帯に指定されており、ここは毎年3メートル近くの大雪に見舞われる。 そんな雪とともに暮らす地域ならではのノウハウを生かし、耐雪住宅の設計や施工、リフォームなど総合建築業として、22年に創業70周年を迎えたのが、飯山ブロック株式会社である。

00年に同社2代目社長に就任した仲條楯一さん(現会長)は、就任当時の様子をこう振り返る。 「 先代(楯一さんの実父)が社長の頃は好景気だったので、大手企業のホテルやペンションの開発業務に携わっていた。 ところが、バブル崩壊のしわ寄せで、受注が完全に止まってしまった」

閉業すれば楽になるが、従業員や協力会社のことを考えると、 会社の継続を最優先に考えるべき、という気持ちが強かった楯一さん。 だが、社長就任時は多額の負債を抱えており、マイナスからの出発に。 十数年間は負債を少しずつ返済していく状態が続いた。

楯一さんは自身の承継について、これまで何も考えなかったわけではない。 「負債で苦労した経験を、後継者にはさせたくなかった。会社の借り入れはすべて個人保証。 妻や家族、親戚などに迷惑をかけている。負債があることで事業承継を先延ばしにしてしまった」

楯一さんはまもなく80歳になろうとしていた。 長男・壮一さんは、すでに現場の第一線で活躍しており、次期経営者としての準備は整いつつある。 そんな折、長年介護してきた両親を看取った。それをきっかけに、楯一さんは、自社の将来や事業承継について前向きに考えるようになった。

事業承継が動き始めた

20年夏に、父(楯一さん)から「そろそろ(社長は)どうだ?」と投げかけられたが、 事業承継に関してはまったくの素人だった仲條壮一さん(当時は常務)。 そこで地元・飯山商工会議所に相談すると、長野県事業承継・引継ぎ支援センター(以下センター)を紹介され、壮一さんが相談することになった。 センターには、当時78歳の前経営者・楯一さんが、80歳になる22年までに代表取締役の交代をしたい、という申し出があった。

そこで、センターは自力では事業承継が前に進まない状況を踏まえ、経営者保証解除を視野に入れた専門家派遣による事業承継計画策定支援、 とりわけ楯一さんが保有する会社の全株式を後継者に移動させるスキームづくりのために、親族内承継では県内の第一人者である税理士を派遣した。

「株式贈与や負債の保証人の悩みをどういった手順で解決すればいいのか、 漠然としていた事業承継にゴールまでの道筋が見えてきました」と壮一さん。 22年3月、当初の計画時期通りに、事業承継特別保証制度を活用した経営者保証解除と、 借り換えによる債務の一本化を実現。楯一さんが会長に、壮一さんが代表取締役社長に就任した。

事業承継のパンフレット

事業承継のパンフレット

飯山ブロック株式会社 代表取締役社長 仲條壮一さん

飯山ブロック株式会社 代表取締役社長 仲條壮一さん

20周年記念の写真

思い出の20周年記念の写真

ついに3代目社長が就任

本件の相談を受け、支援を担当したセンターの事業承継コーディネーター兼サブマネージャーの箱山淳一さん(役職は支援当時。現在は退職)は、 「飯山ブロック株式会社は、地元から愛されている優良企業。後継者が経営的な資質を備えていることや、 前経営者が全株式を保有等の条件が揃っていたため、スムーズな事業承継が実現できました。 負債を抱えていたとはいえ、前経営者が魅力ある企業作りに尽力していたからこそ、後継者が自ら率先して事業承継を進めたといえます」

事業承継を終えて社長・壮一さんは、「早めに事業承継を進めることができて安心した。 会長の年齢(79歳)を考えると体が心配。元気なうちに学びたい」

一方、会長・楯一さんは、「息子が自発的に動いてくれたのは良かった。 負債を少しでも減らした状態で承継したかったので、箱山さんには本当に感謝している」と述べた。 次世代でも地元から愛される企業に。70年前、祖父が立ち上げた大切な会社を、3代目社長が守り続けていく。

事業承継コーディネーター兼サブマネージャー 箱山淳一さん

事業承継コーディネーター兼サブマネージャー 箱山淳一さん

笑顔の仲條 楯一さんと壮一さん

笑顔の仲條 楯一さんと壮一さん

長野県事業承継・引継ぎ支援センターによる事業承継例

長野県事業承継・引継ぎ支援センターによる事業承継例

飯山ブロック株式会社

飯山ブロック株式会社

  • 長野県飯山市南町
  • 創業:1952(昭和27)年
  • 従業員:7人
  • 事業内容:建設業
  • HP:https://i-block.co.jp/

事業承継フロー

    • 1
    • 前経営者が後継者候補に
      事業承継を打診
    • 2
    • 後継者候補が商工会議所に相談
      事業承継・引継ぎ支援センターへ
    • 3
    • 前経営者と後継者候補に意思確認
      センターで支援内容を検討
    • 4
    • 経営者保証コーディネーター
      税理士を派遣
    • 5
    • 自社株式移動のための準備
      経営者保証解除に向けた支援
    • 6
    • 親族内承継による代表者交代
      株式贈与が完了

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事業承継・再生支援部

TEL. 03-5470-1595

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