｢事業承継･引継ぎ｣ 事例紹介

ムロランミートの坂本松夫さんは４代目の社長。曽祖父が明治時代に青森から牛を連れて北海道に渡り、牧場経営の傍ら室蘭市で合名会社坂本精肉店を開業したのが始まりだ。坂本さんの父・坂本武夫さんが社長の時代に、合名会社から有限会社、さらには株式会社へと組織変更し、1977年に現在の新社屋移転を機に社名をムロランミートに変更。坂本さんは2002年に父から社長を引き継いだ。
主な販売先は地元のスーパーや飲食店、病院、学校給食などで、北海道産の豚肉をはじめ、牛肉、鶏肉、羊肉、鴨肉といった肉を提供してきた。

説明を聞いて納得した坂本さんは、第三者への事業引継ぎを決断。センターに相手先探しを依頼する。条件は「従業員の雇用を守る」「取引先に迷惑掛けない」ことだった。
センターには常時、会社を買う意思を持つ多くの企業が登録されている。だが、ムロランミートは比較的規模が大きく、また適合する相手業種も限られるため、ムロランミートに合った相手先が登録企業の中からはなかなか見つからなかった。センターの担当者は「登録企業に限定せず相手先を探していくことが有効」と判断。センターに登録している民間の支援会社からも情報を集めることにした。

現れたのが、千歳市で同じ食肉の卸販売を手掛ける「肉の山本」だった。肉の山本の山本歳勝社長は3代目。祖父が1951年に精肉店を開業、2013年に山本さんが29歳の時、2代目の父から社長を引き継ぎ、次第に事業を拡大していた。
肉の山本の営業エリアは千歳市や札幌市周辺で、室蘭までは進出していなかった。販路拡大のため、室蘭に拠点作りを計画していた山本さんは、独自に民間の支援会社に相手先探しを依頼していたのだ。
支援会社から話を受けたセンターは、ムロランミートの坂本社長に連絡。偶然だが、2人は共通の知人を介して面識があり、互いに好印象を持っていた。相手が肉の山本と知った坂本さんは、即座に話を進めることを決めた。