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信念を未来へつなぐ
センターが支えた挑戦の軌跡
- 第三者承継支援
- 九州地方
- サービス業(他に分類されないもの)
コロナ禍による業績低下と後継者不在に直面。 センターの支援を受け、事業承継の解決策を模索。マッチングを経て若手譲受者と出会い、未来を託した。
地域の車社会に応える信頼
ところが、近年はハイブリッドカーや電気自動車の普及によりエンジンオイルの需要が減少し、栫さんは将来への不安を感じるようになった。その一方で、鹿児島特有の桜島からの火山灰が車体にダメージを与えることから、自動車販売業者からボディや窓ガラスの手入れを求める声が寄せられていることに気づく。栫さんはこうしたニーズに応えるべく、車のボディコーティングや窓ガラスの保護処理など新しい事業に着手。顧客に柔軟に対応し、誠実にサービスを提供することで信頼をさらに深め、地域に根ざした経営基盤を強化していった。
視力低下とコロナ禍の影響
当時、60歳を目前にしていた栫さんは、年齢を重ねるにつれ視力の衰えを感じるようになっていた。ボディコーティングのような繊細な作業では、わずかなキズも見逃せず、以前のように安定したサービスの提供が難しくなってきたことで、顧客に対する責任の重さと不安が日々増していったという。
さらに、コロナ禍が追い打ちをかけた。それまで多くの在庫を抱えていた自動車販売業者も、コロナ禍による新車供給の遅れで車が不足し、販売店から車が消える事態となった。その結果、ボディコーティングの需要も一気に減少した。
【転機】未来を託す決意
そこでまず従業員に声をかけ、後継者としての適任者を探したが、経営に前向きではない従業員もおり、事業を引き継ぐには難しい状況だった。
こうした背景から、第三者への譲渡を検討し、鹿児島県事業承継・引継ぎ支援センター(以下センター)に相談。信頼できる後継者を見つけるための新たな一歩を踏み出すことを決意した。
独立の決意と支援依頼
【支援】信頼でつなぐ事業承継
上園さんの依頼を受けたセンターの安田さんは、起業条件を丁寧に確認し、上園さんが自動車整備の経験を持っていることを踏まえて、譲渡を希望する県内の自動車整備関連事業者のリストを提示するなど、柔軟なサポートを行った。その結果、上園さんは栫さんの事業の魅力に惹かれ、譲受先として希望した。
その後、安田さんは栫さんに「譲受したい若者がいる」ことを伝え、両者のトップ面談を実施し、事業承継の機会を支援した。
複数回の面談と実務指導を経て、栫さんは上園さんについて「業務への熱意と責任感が伝わってきた」と評価。一方の上園さんも、栫さんを「話し上手で知識が豊富」と信頼し、多くのことを学べると感じたという。
安田さんは、契約プロセスを順調に進めるため、詳細な計画書の作成や契約条件の提示を調整し、スムーズな進行を支援した。さらに最終的な契約に向けては弁護士のリーガルチェックも実施し、双方の不安を取り除くための対応を徹底した。こうして複数回の見直しを経て、念入りな契約内容が整備され、事業承継が実現した。
支援で実現した独立開業
「ただお願いしただけ。センターの支援がなかったら事業承継できなかったと思う」(栫さん)と語り、事業承継の手続きが円滑に行えたと感想を語った。一方、上園さんも「安田さんが譲渡希望の事業者リストを迅速に提供してくれたことで、独立への道筋が明確になり、嬉しかった」と述べた。
上園さんは、義弟と共同で株式会社雅商会を設立し、栫さんが築いてきた信頼を受け継ぐことにした。今後は整備工場の増設や設備投資を積極的に進め、会社の基盤を強固にする計画を掲げており、鹿児島県でトップの自動車整備会社を目標としている。将来的に「栫さんから成長したねと言われるような会社にしたい」と述べた。
成功のポイント
鹿児島県事業承継・引継ぎ支援センターの事業承継事例
事業承継フロー
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1栫さんが事業譲渡をセンターに相談
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2上園さんは独立開業を希望
金融機関の協力でセンターと面談 -
3エリアコーディネーターが両者をマッチング
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4複数回の面談を経て、両者が信頼関係を構築
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5センターが契約条件の調整とリーガルチェック
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6事業承継完了
継続的なフォローアップ
企業情報
創業:1987(昭和62)年
従業員数:4名
事業内容:自動車整備業

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