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限界を感じたらどうすべきか?
未来を切り開いた店主のSNS
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後継者不在で廃業を決めた豆腐店。だが、SNSで廃店を表明すると、事業を譲受したいという地元企業が現れた。一旦は諦めていた承継は、どう動いたのか?
事業承継が難しかった理由
後継者が見つからない場合は廃業するしかない!?
全国の事業承継・引継ぎ支援センターには、後継者不在の事業者(経営者)と経営意欲のある創業希望者を引き合わせ、第三者による事業承継を支援する後継者人材バンクというマッチングの仕組みがある。現在の事業を絶やすことなく次世代に引き継ぐことができるうえ、事業の存続を望む従業員や取引先、地域の期待に応えることができる。
あの石豆富を再び
日本有数の豪雪地帯で、かつて日本の秘境とも呼ばれていた岐阜県白川村。1995年には白川郷・五箇山の合掌造り集落が世界遺産に登録され、以降毎年多くの観光客がこの地を訪れるようになった。そこから車で約10分のところに、深山豆富店がある。この地域には、古くから紐で縛っても崩れないほど硬く仕上げた石豆富を食べる習慣があった。
同店店主の大野誠信さんは、幼い頃、盆や正月だけに食べた石豆富の味が忘れられず、豆腐作りの世界に飛び込んだ。最初は失敗ばかりだったが、試行錯誤を繰り返していくうちに、ようやく納得できる石豆富を作れるようになった。石豆富よりやや柔らかい花豆富、大豆を石臼ですりつぶしたすったても販売するようになり、やがて地元で愛される豆腐店になった。大野さんの豆腐は好評だった。とはいえ、年を重ねるにつれ今後の事業継続に不安を感じ、後継者を探した。だが、一向に見つからなかった。「体力的に限界なうえ、突然休業したらお客様に多大な迷惑をかけてしまう。そこで廃店する決断をした」
廃店をSNSで公表
事業承継の専門家が担う理由
例えば、先代の人脈で交わしていた口約束は、経営権が第三者に渡ると白紙に戻される可能性がある。 また、万が一譲渡後に事業継続ができなくなった場合、どういった対策が必要なのか、 そうした想定外の条項を契約書に盛り込むことが不可欠であるという。 このようにセンターを活用すると、中立的な立場で譲渡者・譲受者それぞれの意見を聞き、 専門的な知見であらゆる状況を精査、譲渡後に不都合が起きないよう双方が納得できる契約を締結することが可能になる。
苦境こそ声を挙げるべき
後日、ヒダカラ社員の古田智也さんが店舗運営に名乗りを上げた。古田さんは約3か月間、大野さんから直接指導を受け、豆腐作りの腕を磨いた。「若いから覚えが早く、安心して店を任せられると思った」と大野さん。一方、事業を譲受したヒダカラの舩坂さんは、「店舗があるおかげで白川村の方々との交流が深まった。今後は白川村の魅力をもっと発信したい。やりたいことが多くて、ワクワクしている」
こうして2021年8月に事業譲渡契約が完了した。このように地元企業の若者たちが事業を引き継ぎ、店舗を無事再開した深山豆富店。今回、意外なことから事業承継が進んだのは、大野さんが廃店を自らSNSで公表したことにほかならない。小規模あるいは中小企業経営者は、時には悩みを打ち明けることが大切。何かしら声を上げれば、解決に向かう筋道を見つけることができるかもしれない。
岐阜県事業承継・引継ぎ支援センターによる事業承継例
事業承継フロー
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1深山豆富店店主の大野さんがSNSで廃店を公表
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2駆けつけたヒダカラ舩坂さんに事業譲渡の話を持ちかける
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3事業承継・引継ぎ支援センターの支援を受け、契約準備へ
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4店舗責任者に古田さんが内定
豆腐製造を大野さんから学ぶ -
5有限会社帰雲商事と株式会社ヒダカラ
事業譲渡契約が成立 -
6株式会社ヒダカラが運営する深山豆富店が再スタート
