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“息子”のような後継者に思いを託す
創業114年の食肉販売を絶やすな
- 第三者承継支援
- 北海道地方
- 卸売業
1907(明治40)年創業のムロランミート。食材豊富な北海道で110年以上、さまざまな肉を家庭や飲食店などに提供してきた。後継者がいないなか、「廃業でお客に迷惑を掛けられない」との思いを強めていたとき、“息子”のような跡継ぎ候補が現れた。「この人なら思いを託せる」。事業承継の話はとんとん拍子でまとまった。
青森から北海道へ
主な販売先は地元のスーパーや飲食店、病院、学校給食などで、北海道産の豚肉をはじめ、牛肉、鶏肉、羊肉、鴨肉といった肉を提供してきた。
廃業も視野
スーパーは日曜も営業だ。坂本さんは、正月も元日以外は朝から出社し、従業員を休ませながら自らスーパーなどに配達し、営業活動も担った。健康状態は問題なかったが、70歳を前に会社の行く末を考えるようになる。というのも坂本さんには娘が3人で、結婚などで家を離れ会社を継ぐ親族はいなかった。従業員にも事業承継する意思を持つ者はおらず「最悪は廃業か…」という考えもよぎった。
「毎日届けているお客様に『明日から廃業します』とは言えない」—。坂本さんはメインバンクの室蘭信用金庫に相談。「M&A(企業の合併・買収)で第三者に譲渡し、会社を存続する方法がある」との話を聞き、調べてみることにした。
室蘭信用金庫に紹介された札幌市の北海道事業承継・引継ぎ支援センターを訪ね「M&Aとは」という一般知識から話を聞いた。公的機関であるセンターは、相談が無料。坂本さんは「民間は手数料が高いと聞いていたので相談しやすかった」と話す。
センターの支援
センターには常時、会社を買う意思を持つ多くの企業が登録されている。だが、ムロランミートは比較的規模が大きく、また適合する相手業種も限られるため、ムロランミートに合った相手先が登録企業の中からはなかなか見つからなかった。センターの担当者は「登録企業に限定せず相手先を探していくことが有効」と判断。センターに登録している民間の支援会社からも情報を集めることにした。
面識あった相手
肉の山本の営業エリアは千歳市や札幌市周辺で、室蘭までは進出していなかった。販路拡大のため、室蘭に拠点作りを計画していた山本さんは、独自に民間の支援会社に相手先探しを依頼していたのだ。
支援会社から話を受けたセンターは、ムロランミートの坂本社長に連絡。偶然だが、2人は共通の知人を介して面識があり、互いに好印象を持っていた。相手が肉の山本と知った坂本さんは、即座に話を進めることを決めた。
社名も残す
話はとんとん拍子に進んだ。山本さんは従業員の雇用維持はもちろん、肉の山本の室蘭営業所とせず、株式譲渡で100%子会社のグループ会社として歴史あるムロランミートの名前も残した。相手先探しを具体化した2020年11月から譲渡成立の21年5月まで半年でのスピード成約となった。センター担当者は「2人が知り合いだったことで早期成約できたが、早い段階で登録している民間の支援会社と連携した支援を選択したことも成功の一因」と振り返る。
山本さんは坂本さんについて「自分から見たら大先輩。父親のような存在だ」と敬意を表す。山本さんは千歳市から週2日程度、ムロランミートに通う一方、坂本さんには2年間、顧問として残ってもらい時間をかけて業務を引き継ぐ。「事業譲渡・承継はお見合いみたいなもの」。2人は経営者同士の波長が大事だと強調する。波長が合った“父子経営”で今後、会社を成長させる考えだ。
事業承継フロー
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1経営者が高齢になってきたが、
親族及び従業員に後継者がおらず室蘭信用金庫に相談 -
2室蘭信用金庫より北海道事業承継・
引継ぎ支援センターを紹介され相談 -
3第三者への事業引継ぎを提案され、
センターに相手先探しを依頼 -
4民間支援会社経由で
同業者の相手先候補を紹介 -
5相手探しから半年で成約、前経営者は
顧問として残り2年かけ引き継ぐ
企業情報
創業:1907(明治40)年
従業員数:20名
事業内容:食肉卸売り・小売業
