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後継者がアトツギ甲子園で入賞
「お客さんの便利屋」はそのままに会社を引き継ぐ
株式会社三木盛進堂
- 親族内承継支援
- 近畿地方
- 卸売業
経営者には将来の責任も
京都の伝統工芸のひとつ、鮮やかな色彩が特徴の京友禅。京都市太秦に本社を構える三木盛進堂は、京友禅の独特な染色技法に欠かせない粘着テープや刷毛などの副資材販売が主力事業である。近年は少子化に伴う和装の市場縮小もあって需要は減少傾向、取引先からの要望に応えるかたちで名刺や伝票の印刷も手掛けている。
1965年生まれの幸彦さんは経営者としてはまだ若いが、あるきっかけで事業の承継を意識するようになったという。それは、幸彦さんが地元小学校のPTAの役員を引き受けた際、当時の校長が語った「着任したらすぐ次のこと、将来のことにも責任を持たないといけない」という言葉だった。「経営に置き換えれば、これからのことを考え、その道筋を早めに作ることが永続性につながるんじゃないかと」(幸彦さん)。
【転機】後継者の決意
幸彦さんの長男で、大学卒業後まったく別の業界に就職していた幸太郎さんが、家業である三木盛進堂に入社したのが5年ほど前。入社当時は特に承継の意思があったわけではないが、しばらくすると「自分ならもっと伸ばせるんじゃないか」と感じ始めた幸太郎さんは、会社を継ぐことを決意する。
ちょうどその頃、幸太郎さんは「アトツギ甲子園」の存在を知る。「書類だけでも」という誘いに、自身のプレーヤーとしての経験と家業の印刷技術を組み合わせたトレーディングカードゲーム(TCG)の事業計画でエントリー。ファイナリストまで残り、入賞を果たした。
ちょうどその頃、幸太郎さんは「アトツギ甲子園」の存在を知る。「書類だけでも」という誘いに、自身のプレーヤーとしての経験と家業の印刷技術を組み合わせたトレーディングカードゲーム(TCG)の事業計画でエントリー。ファイナリストまで残り、入賞を果たした。
【支援】金融機関とセンターの連携
一方、地域金融機関として同社を長く支援する京都信用金庫は、幸彦社長と事業承継の考えや課題を共有してきた。そんな中、幸太郎さんのアトツギ甲子園入賞もきっかけとなり、京都府事業承継・引継ぎ支援センター(以下センター)と連携しながら、事業承継が具体的に動き出した。
新会社ではなく本業の新事業として
幸太郎さんの新事業計画であるTCGには、三木盛進堂の事業のひとつである印刷も含まれるものの、既存事業との関連性はそれほど強くない。とすれば、ベンチャービジネスとして新たに会社を立ち上げる方法も選択肢となるだろう。これに対し幸太郎さんは新会社を考えなかったという。「今まで会社を支えてくださった方とか今までの仕組みを守ることが大事。それが後継ぎの社会性だと思うんです」(幸太郎さん)。
お互いに意思を尊重
京都信用金庫壬生支店長の塩見敏彦さんは「当初は起業もあるのではと考えましたが、幸太郎さんは既存事業の強みや重要性を十分理解されていたため、このまま会社を引き継ぐことが最善の選択だと思いました」と語る。
センターのサブマネージャー・土屋卓さんも「今回の場合、お互いにそれぞれの考え方を尊重されていたという印象です。それゆえ、事業承継計画書の作成もスムーズに進みました」と、三木さん父子の関係性の良さを強調する。
承継者と後継者、これからの役割
センターは京都信用金庫とともに事業承継計画の策定を支援。2023年11月にはこの計画について承継者と後継者が合意し、親子間での承継が完了した。今後5年をめどに経営の引継ぎを行う予定だ。
「これからは息子との接触時間を増やしていこうと思っています」と幸彦社長。これまで社長としてやってきたこと、決断してきたことについて、単なる事実としてだけではなく、その時の背景や想いを伝えたいのだという。
「父が得意なところはこのまま続けて、その間に自分が引き継ぐべきところ、新たにやるべきことを進めていきたいですね。そのための時間は大事にしたいと思っています」(幸太郎さん)。
「父が得意なところはこのまま続けて、その間に自分が引き継ぐべきところ、新たにやるべきことを進めていきたいですね。そのための時間は大事にしたいと思っています」(幸太郎さん)。
成功のポイント
事業承継というのはいわゆる世代交代なのですが、経営者が変わるだけでなく、取り巻く環境も変わります。また、事業も見直したり変革させたりする貴重な機会であるとも言えるでしょう。今回はその機会をうまく活用されたことが、成功の大きなポイントだと思います。そういう想いが成功のポイントだったと思います(土屋さん)。
京都府事業承継・引継ぎ支援センターによる事業承継事
事業承継フロー
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1現社長の事業承継の意思を京都信用金庫がキャッチアップ
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2承継予定の現社長の長男が「アトツギ甲子園」で入賞
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3京都信用金庫がセンターに事業承継の支援を要請
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4関係者全員で意見交換の場を設け承継者・後継者の意向を確認
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5専門家も交えて事業承継計画を策定
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65 年をめどに代表権移転と株式贈与を予定
企業情報
株式会社三木盛進堂

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